大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和40年(オ)208号 判決 1965年12月03日

上告人

株式会社船越鉄工所

右代表取締役

船越卯平

右訴訟代理人

伊藤仁

被上告人

日本熱学工業株式会社

右代表取締役

牛田正郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人伊藤仁の上告理由第一点について。

論旨は、債権者にも信義則の要求する程度において給付の実現に協力すべき法律上の義務があり、給付の不受領はあたかも債務者が履行しない場合と同じく債務不履行となるものと解すべきである、と主張し、債権者は債権の目的物を受領する義務なく債権者の受領遅滞を理由として債務者は契約解除をなしえない旨の原判決の判断は、民法の基本原則である信義則に違反する、という。

しかし、債務者の債務不履行と債権者の受領遅滞とは、その性質が異なるのであるから、一般に後者に前者と全く同一の効果を認めることは民法の予想していないところというべきである。民法四一四条・四一五条・五四一条等は、いずれも債務者の債務不履行のみを想定した規定であること明文上明らかであり、受領遅滞に対し債務者のとりうる措置としては、供託・自動売却等の規定を設けているのである。されば、特段の事由の認められない本件において被上告人の受領遅滞を理由として上告人は契約を解除することができない旨の原判決の判断は正当であつて、論旨は採用することができない。

同第二点について。

上告人の本訴は損害賠償の請求であつて、請負代金の支払を求めるものでないことが明らかであるから、論旨は無用の論議に帰し、排斥を免れない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例